折葉は逃げました

冬の日の図書館(仮)

 十一月二十日、金曜。
 コートを引っつかんで家を出た。腕時計も財布も忘れて出てきてしまったので時間は分からなかったが――戻る気にはとてもなれなかった――寄り道した公園の時計によると八時三十分を回ったところだった。
 それから公園の中を適当に歩いた。図書館の開館時間まであと一時間半もある。僕は大きな池の近くにあるベンチに積もった雪をコートの袖で払い、コートがウール製だったので袖にくっついた雪も払ってからベンチに座って開館時間までの馬鹿げた一時間三十分をどう潰すか考えようとしたが、一日の中ですることと言えば自室のパソコンに向かっているか、図書館で本を読んでいるかの僕が考えたところでいい案が浮かぶわけもない。とりあえずは殴られて痛む頬っぺたをどうにかしたかった。手袋を持ってないので素手で雪玉を作り、痛む場所に当ててみた。唇を切っているらしく、雪玉は赤く染まった。
 雪玉が三分の一くらいの大きさになるまで当て続け、さすがに手が冷たくなってきたので赤い雪玉を池に投げ込んだ。池にいつもいるカモは一羽もいなかった。

地底の楽園(仮題) part8

[プロローグ? の続き7]
 二代目守護神は黒い炎に身を焼かれながらもその炎を利用し、右翼を復元して空に飛び立ちました。龍の悪魔はまっすぐ街へ、二代目守護神に向かってきます。二代目守護神は二十二代目祭司の時代と同じように、力を取り込むため龍の悪魔に噛みつきました。けれど二代目守護神は簡単に振り解かれてしまいます。街を守りながら全く眠らず体を休ませていなかった二代目守護神と、その間に傷を癒してきた龍の悪魔の間には圧倒的な力の差がありました。着実に龍の悪魔は街に近づきます。
 噛みついては振り解かれ、噛みついては振り解かれ、二代目守護神は身体中傷だらけになっても決して諦めません。龍の悪魔に噛みつかれ、地面に叩きつけられてもすぐにあとを追ってまた噛みつきます。そんな二代目守護神の必死の抵抗もむなしく龍の悪魔は街の中に入ってしまいます。龍の悪魔はその口から黒い炎を吐き、尾を振り回して街を破壊しました。龍の悪魔はたくさんの人々が暮らす街の中心部へ向かいます。二代目守護神はそれを何としてでも食い止めるため、最後の力を振り絞り龍の悪魔の腹に噛みつきました。龍の悪魔から力を吸収します。二代目守護神は力を半分も取り込むことができずに振り解かれてしまいましたが、それでも力を大分吸収できたため黒い炎を元の真っ赤な炎に戻すことはできるようになりました。二代目守護神は真っ赤な炎を纏って再度、龍の悪魔に噛みつきます。二代目守護神が纏っている真っ赤な炎は龍の悪魔に燃え移り、龍の悪魔の鱗を焦がして身を焼きました。
 そして、ついに二代目守護神は龍の悪魔から力を全て取り込むことに成功します。力を失った龍の悪魔は意思が入った器だけになり、地上へ落ちていきました。龍の悪魔と二代目守護神が戦っていたその真下には神殿が――地底の楽園へ続く縦穴が大きく口を開いていました。龍の悪魔との戦いで力も体力も消耗してしまった二代目守護神も纏っていた真っ赤な炎は消えてしまい、炎で復元した右翼も消え、龍の悪魔と共に縦穴の中へ吸い込まれていくように落ちていきます。
 二代目守護神は人間の姿になり、縦穴の縁に手をかけました。ルナに会いたい一心で縦穴の縁にしがみつき、傷だらけの身体で這い上がろうとします。
 しかし、それは地底の楽園に眠る神々が許しませんでした。地底の神々の意思が形となって二代目守護神の足を掴み、縦穴の中へ引きずり下ろそうとします。二代目守護神は地底の神々と話し合おうとするも、意思だけの神々には言葉は通じず、とうとう縦穴の中へ落ちてしまいました。手が縦穴の縁から離れた瞬間、二代目守護神はルナの名前を呟きましたが、それは声に出ることはなくルナにも届きませんでした。

地底の楽園(仮題) part7

[プロローグ? の続き6]
 その朝。前日降っていた雨は嘘のように晴れ渡っていました。二十八代目祭司が帰り支度をしていると、二代目守護神が救った金髪の少女が牢屋にやって来ました。今日は一人で、自分の足で。少女は二代目守護神にお礼が言いたくて一人で牢屋まで来たそうです。二十八代目祭司は止めようとしましたが、二代目守護神自身が会いたいと言い、結果的には会うのを了承することになりました。
 神と人とのルールで守護神と人間は祭司以外に姿を見せてはいけない、話してはいけないとされていますが、二代目守護神が牢屋に閉じ込められてからそのルールはあってないようなものになっていました。
 二十八代目祭司は家へ帰り、牢屋には監守を除いて二代目守護神と少女だけになりました。少女は何度も頭を下げ、二代目守護神にお礼を言いました。けれど二代目守護神が少女に会いたいと言った理由は礼の言葉を聞きたかったわけではなく、少女と話がしたいからでした。二代目守護神は二代目守護神が見てきた街の話をし、少女からは少女のことを聞きました。
 少女の名前はルナというそうです。ルナには親戚が一人もおらず、両親も事故で亡くなったため近所に住んでいた人たちの力を借りて暮らしていたそうです。
 数日後、二代目守護神の意向でルナは二十八代目祭司の家で暮らすことになりました。ルナには二代目守護神の意向でとは知らされませんでしたが、ルナは二代目守護神に救われた恩以上のものを感じて二十八代目祭司と共に毎日牢屋へ足を運び、毎日二代目守護神と過ごしました。ルナは二代目守護神のことを街の守護神として信仰し、一人の人間としても友人として接しました。ルナを救ったことで力が尽き掛け、体調を悪くしていた二代目守護神は明るいルナや心優しく優秀な祭司に囲まれ、徐々に回復していきました。しかし残酷なまでに時間は止まることなく過ぎていきます。
 二十八代目祭司の髪は更に白くなり、ルナは少女から女性になっていました。
 二十八代目祭司がいつものように二代目守護神に牢屋へ会いに行くと、二代目守護神は珍しく暗い表情で出迎えました。二代目守護神がルナのことを尋ねると、二十八代目祭司はルナは家事の手伝いをしていて来るのが遅くなると答えました。この日、運悪くルナは二十八代目祭司の家で家事の手伝いをしていたために、二代目守護神はルナに別れの言葉を伝えることができなかったのでした。
 二代目守護神は二十八代目祭司に感謝と別れの言葉を告げました。突然の改まった言葉に二十八代目祭司は動揺しましたが二代目守護神は無視し、狼の姿に戻って鉄格子の部屋から体当たりで破り出ました。二十八代目祭司が驚いて尻餅をついたのにも見向きもせず、街の中を駆け抜けます。黒い炎に焼かれ尽くされてしまう前に、街の外へ。黒く大きな龍の悪魔がいる街の外へ。
 初代守護神夫婦から続く長い、長い戦いが終わる日が、ついにやって来ました。

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 なぜ僕が思いつく物語は文章にすると面白くなくなるのか。文才がないのか、物語自体が最初から面白くないのか。

地底の楽園(仮題) part6

[プロローグ? の続き5]
 二代目守護神は街の人間の信頼や信仰がなくとも、祭司から見離されても牢屋の中で街を守りました。それは祭司が二十二代目から二十三代目になっても変わることはありません。それが守護神としての光の翼を持つ狼の役目なのです。しかしその光の翼も、もう左翼しか残っていませんでした。
 二代目守護神は牢屋に入れられてから一度も眠ることはありませんでした。眠って狼の姿に戻ってしまえば黒い炎に身を焼かれてしまいます。龍の悪魔との戦いはまだ終わっていないのです。二代目守護神は自分に取り込まれた力を龍の悪魔が取り戻しに再び街に戻ってくると確信していました。おそらく、龍の悪魔は戦いの傷を癒してから街に戻ってくると二代目守護神は考えました。そして龍の悪魔が街に戻ってきたときが戦いの終りだと考えました。初代守護神夫婦から続く長い、長い戦いの終りです。それまでどんなことがあろうとも、眠るわけにはいきません。
 祭司が二十四代目になり、人を一人助けても二代目守護神は眠りません。二代目守護神が少女を襲ったという誤解で祭司として肩身が狭い思いをしていた二十五代目の祭司が二代目守護神にどんなひどい言葉を浴びせようとも決して眠りません。二十六代目祭司の時代も水不足から街を守り眠らず、二十七代目祭司の時代でも大火災から街を守りました。二十七代目祭司が老衰死し、その次男が二十八代目祭司になった日も二代目守護神は眠らず、二十八代目祭司に祝福の言葉を送りました。
 二十八代目の祭司は他の祭司と――二代目守護神が誤解され牢屋に入れられてからの冷たくあしらい、ときにはひどい言葉を浴びせた祭司達とは――どこか違いました。
 二十八代目祭司の話によると、二十八代目祭司になるはずだったのは二十七代目の長男だったと言います。けれど二十七代目の長男は二十七代目が老衰死した晩に逃げ出し、急遽代わりの祭司として次男である自分が選ばれた、と。そして自分は祭司になるための教育も受けておらず、守護神様のことも祭司のことも全く分からないと二十八代目祭司は二代目守護神に話しました。
 二代目守護神は守護神と祭司について二十八代目祭司に説明しました。しかし一日で説明し切れるほど簡単なことではありません。二十八代目祭司は毎日二代目守護神がいる牢屋に足を運び、早く祭司の役目が勤められるよう熱心に二代目守護神の説明を聞きました。二代目守護神の説明を聞き終えて祭司として必要な知識全てを覚え、習得しても二十八代目祭司は二代目守護神がいる牢獄へ毎日欠かさず足を運びました。話し相手として、一人の友人として。
 二代目守護神は二十八代目祭司との会話を楽しく思いました。歴代の祭司ともこんなに話したことはありません。二十八代目祭司と話している間だけ、二代目祭司の苦しみが和らぐようでした。しかし楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。二代目守護神と初めて対面したとき、二十八代目祭司は二代目守護神の人間の姿と同じ青年だったのに、今では髪に白いものが交じる歳になり、結婚をして子供も二人いました。
 二十八代目祭司は祭司として非常に優秀に動きました。二十八代目祭司になってから五年かけて街の人間を説得して二十五代目祭司の時代から開かれていない祭りを復活させ、信仰も徐々に回復させていきました。二十八代目祭司は二代目守護神を牢屋から出そうとも努力していましたが、それは街の人間達に認められませんでした。二十八代目祭司は二代目守護神に牢屋から出してやれなくて申しわけないと、謝りましたが二代目守護神は二十八代目祭司の努力を理解し、評価しました。
 強い雨の日のこと。二代目守護神が初代守護神時代の地底の楽園の話を二十八代目祭司にしていると、鉄格子のそばに立っていた二人の監守の話が耳に入ってきました。監守に詳しく話してもらうと話の内容は、監守の家の近所に住む三人家族の夫婦が事故で亡くなり、その娘も病を患って医者も手に負えず死ぬのを待つばかりになっている、というものでした。
 なぜ早く自分を頼らないのかと二代目守護神は怒りましたが誤解されて牢屋に閉じ込められてから信仰心が薄れ、守護神の存在自体忘れられていることに気づき、口を噤みました。二代目守護神はその娘を早くこの牢屋に連れて来るよう監守にお願いしました。二十八代目祭司も共にお願いしました。
 医者にも手に負えない病を患っている娘は医者に抱かれて二代目守護神がいる牢屋にやって来ました。まだ幼い、金髪の少女でした。少女はぐったりとして意識は朦朧としていました。二代目守護神は両手で鉄格子越しに少女の片手を握りました。熱っぽい、力が入っていない手でした。二代目守護神が少女の手を離すと少女は何事もなかったかのようにはっきりと目を開き、自分の足で立ちました。一方、二代目守護神は顔色も悪く、その場に座りこんでしまいました。
 二代目守護神は今まで龍の悪魔から奪い取った力で街と街の人間を守ってきましたが、それももう尽き掛けていました。疲れと眠気が容赦なく二代目守護神を襲います。二代目守護神は眠ってしまわないように一晩だけ牢屋にいてほしいと二十八代目祭司に頼みました。二十八代目祭司は快く引き受け、二人は朝まで地底の楽園や街のことを話しました。

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 もう止めて! 二代目守護神のライフは0よ!

地底の楽園(仮題) part5

[プロローグ? の続き4]
 二代目守護神は躊躇しましたが、狼の姿に戻って龍の悪魔に噛みつきました。龍の悪魔が暴れるにもかかわらず二代目守護神は噛みついたまま両翼を広げ、地上に続く縦穴を目指して羽ばたきました。地底の神々が眠るこの楽園で悪魔と戦うわけにはいきません。二代目守護神、光の翼を持つ狼の身体には真っ赤な炎が纏い、背には透き通る光の翼。その姿はまるで初代守護神夫婦が再臨を果たしたようでした。
 二代目守護神は地上に続く長い、長い縦穴を龍の悪魔に噛みつき抱えたまま上りました。その間も龍の悪魔は暴れ、もがき、二代目守護神を縦穴の壁に押し付け振り解こうとしました。二代目守護神が龍の悪魔を地上に引っ張り出すと、そのまま街の外へ向かいます。龍の悪魔は咆哮し、もがきました。
 二代目守護神には龍の悪魔と真っ向から力で戦おうとも勝てないことは初代守護神夫婦の経験で分かっていました。力での戦いができないとなると方法はただひとつ、龍の悪魔の力を二代目守護神の身体に取り込むこと。しかし悪魔の力を取り込むということは、ひとつの器の中に相反する力を入れることになります。悪魔の力をすべて取り込み封じ込めることができるか、封じ込めることができずに二代目守護神自体も悪魔になってしまうか。結果は二代目守護神にも想像できませんでした。
 しかしそれ以外に方法はありません。二代目守護神が龍の悪魔を地面に叩きつけて押さえ込み、悪魔の力をその身に取り込み始めました。龍の悪魔は二代目守護神が何をしようとしているのかを悟り、激しく暴れます。悪魔の力を半分ほど取り込み終わったとき、突如として二代目守護神を包み込んでいた真っ赤な炎は黒く変わりました。黒い炎は二代目守護神の身を焼き、右の光の翼は失われました。黒い炎に身を焼かれ、右翼を失ってもなお二代目守護神は龍の悪魔を放しません。
 そして、悪魔の力を全て取り込むまであと一歩、あと一歩というところで龍の悪魔は姿を少女に変えました。二代目守護神は動揺して龍の悪魔を押さえつける力を緩めてしまいます。二代目守護神の拘束から逃れた龍の悪魔は少女の姿のまま逃げ出しました。二代目守護神はその後を追おうとしましたが、それは街の人間達に止められました。
 街の人間達の手には武器が握られ、二代目守護神を見る目はまるで少女を襲う悪魔を見るようでした。
 二代目守護神は黒い炎に身を焼かれ続けるのに耐え切れず、人間の姿になり街の人間や祭司に弁解しましたが信じるものは誰一人いませんでした。祭司でさえ、二代目守護神を守ろうとはしませんでした。その誤解から二代目守護神は地底の楽園へ続く縦穴の近くにある牢屋に入れられ、信頼は地に落ちました。

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Don’t think. feel!
厨二臭くなってきた。