折葉は逃げました

地底の楽園(仮題) part4

[プロローグ? の続き3]
 少女は二代目守護神の姿を見て恐れたのか、身をすくめました。二代目守護神も祭司以外の人間を見るのが初めてで、身をすくめました。二代目守護神がいくら呼ぼうとも祭司は一向に姿を現しません。困った二代目守護神はルールに反すると知りつつも、人の言葉を話しやすいように人間の姿になり、少女に話しかけました。
 誰なのか、どこから来たのか、なぜここにいるのかと二代目守護神が質問しても少女は一言も話そうとしません。二代目守護神が再び祭司を呼んでも返事ひとつ聞こえませんし、姿も現しません。
 困り果てた二代目守護神は仕方なく、少女を放っておけないので地底の楽園に連れ帰ることにしました。地底の楽園へ下りた少女と二代目守護神は捧げられた食べ物を一緒に食べることにしました。相変わらず少女は一言も話さず、二代目守護神が一方的に話しかけるだけでしたが二代目守護神にとっては楽しい食事になりました。誰かと一緒に食事をすることが二代目守護神には初めての経験だったのです。
 こうして二代目守護神は次に祭司が来るまでしばらく少女と暮らすことになりました。二代目守護神は広大な楽園で特に寝床も何も決めてなく、そのときの気分で場所を選んでいましたが、少女とはぐれないようにするため場所を決めることにしました。選んだ場所は二代目守護神が地底の楽園で最も気に入っている場所――草原の中央に位置し、楽園全体が見渡せる大樹が座する丘で少女と共に過ごすことになりました。
 二代目守護神は少女に地底の楽園の中で食べ物と飲み水がある場所、釣りの仕方や火のおこし方を教えました。それから二代目守護神は眠らないように努力しました。二代目守護神は少女に狼の姿を見られたくなかったのです。理由はそれだけではなく、人と神では時間の流れが違います。神の感覚では一晩眠ったつもりでも、人間の世界では人が生まれて死ぬまで以上の時間が経過していたなんてことはよくあることでした。
 ある日の朝。二代目守護神と少女は朝食のために釣りをしていると、祭司からの呼び出しがありました。しかし二代目守護神が少女を連れて地下神殿へ行ってもまたもや祭司の姿はなく、祭壇の上に手紙が置いてあるだけでした。
 祭司の置手紙の内容は地上の街に住む妊婦が病を患い、このままでは母子共に命を落としてしまうのでどうか守護神様の力でお救いください――というものでした。
 二代目守護神は祭司を呼んでみました。やはり返事はありません。仕方なく、二代目守護神と少女は大樹が座する丘に戻ることにしました。
 神といえども、神にとって人の命を救うのは大仕事です。少女と出会ってからもう何日も眠っていない二代目守護神には妊婦を救ったあと眠って休まなければ、その存在が消えてしまう危険がある大変な作業でした。それでも、守護神が街の人間を見殺しにすることはできません。二代目守護神は覚悟を決め、妊婦を救いました。
 そして、少女にもう一度食べ物と飲み水がある場所、釣りの仕方や火のおこし方など少女が一人で生きていくのに必要なことを教え、少女が生きているうちに目が覚めるよう願いながら、大樹の下で眠りにつきました。

 眠りから覚めると二代目守護神はすぐに人間の姿になり、少女を探しました。少女は二代目守護神の隣ですやすやと眠っていました。その姿を見て二代目守護神は胸を撫で下ろして安心し、祭司に呼ばれていることに気づきました。二代目守護神は少女を大樹の下に残し、地下神殿に入ると初めて会う祭司が二代目守護神を出迎えました。眠っている間に祭司が交代していたなんてことはよくあることです。二代目守護神は新しい祭司に何代目か聞きました。
 二十二代目の祭司、と新しい祭司は言いました。二代目守護神は驚きました。確かあの少女を見つけたのは十九代目の祭司の時代ではなかったか? こんなにも時間が経っているのにどうして。
 どうしてあの少女は少女のままなのだ。
 二代目守護神は二十二代目祭司の話も聞かず急いで楽園全体を見渡せる、大樹が座する丘へ向かいました。二代目守護神が大樹が座する丘に駆けつけた頃にはもうすやすやと眠っていた少女の姿はなく、そこには鱗は剥がれ、肉は切り裂かれ、身体中傷だらけの姿で草原に這いつくばる黒く大きな龍の姿しかありませんでした。

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 頑張った。
 物語の終りは見えど、終りに至る道見えず。